最初で最後の恋だから。ーセンセイー
学校に着くまで紗智はおしゃべりを続けた。

といっても大半は紗智がしゃべっていて私は頷くだけだったけれど。

「悪かったな。」

バスから降りて紗智はクラスメートを見つけ、足早に行ってしまった。

「あいつ、人と話すのが好きなんだ。
だけど自分の話ばかりだから慣れないと疲れるだろ?」

「ううん、私は話すのが得意じゃないから羨ましいよ。」

校門をくぐると遅刻ギリギリだった。

1限目が体育だという古賀君は走って行ってしまった。

私は少し早歩きに変えて仮設校舎へ向かった。

「ずいぶんのんびりだな。」

声を掛けられ振り向くと伊藤先生がいた。

「髪が跳ねてるぞ。
・・・いつもはちゃんとしてるのにどうかしたのか?」

トクン。

何故か心臓の音がした。

それを諫めるように私は返事をした。

「寝坊しただけです。」

「・・・授業が始まる。
教室に急げよ。」

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