最初で最後の恋だから。ーセンセイー
「ゆずちゃん~。」

休憩に入ると紗智が近くにやって来た。

「もう勉強ばっかりでしんどいよ~。」

「それが進学合宿の目的なんだから・・・。」

「面談とか交流とかはしてないの?」

「面談はしたけど交流はしてない。」

「先輩の話聞くって言っても誰に話聞いたらいいのか解んないもん。」

「だったら汐見に話を聞いたらどうだ?」

近くにいた伊藤先生に会話は聞こえていたらしい。

「汐見も参加してるから話聞くなら伝えておくが。」

「先輩も参加してるんだあ。
話聞きたい~。」

「じゃあ伝えといてやるからしっかり話きけよ?」

「はあい。
せんせ、ありがとう。」

「ありがとうございます。」

お礼を言って頭を下げた。

「そういえばね、夜花火やるらしいよ。」

「そうなんだ。」

「自由参加なんだけどね、ゆずちゃん一緒にやろうよ。」

「うーん。」

「ゆずちゃん、花火好きじゃないの?」

「人が多いところが好きじゃないの。」

「そうなんだ・・・残念。」

紗智はしょぼんとしてしまった。

「ゆずちゃん、紗智ちゃん。」

声を掛けてきたのは汐見先輩だった。

「伊藤先生から交流の呼び出しがあって。
二人からだって聞いたけど、どんなことが聞きたいのかな?」

「先輩はうちの学校に入った時から進学希望だったんですか?」

「ううん・・・最初は就職希望で。
二年生の夏休みに進学希望に変えたの。」

「突然??」

「ホテルに就職したいってずっと思ってたんだけど。
国際クラスに進んで英語とか中国語とか勉強してるうちにもっと勉強したいなって思って。」

「進学クラスじゃないのに大変じゃないですか?」

「確かに大変だけど自分で希望したことだったし。
それに先生方が色々相談に乗ってくださったから。
・・・二人はまだ一年生の夏休みだものね。
まだ時間は残ってるから色々考えてみるといいんじゃないかな。
私で良ければいつでも相談に乗るから、話してみてね。」

「はあい。」

「先輩、ありがとうございました。」

先輩を見送った後、再び部屋に戻り黙々と自主勉強をこなした。

「ゆずちゃんは夢ってあるの?」

「ある、のかな。」

「どんな夢~?」

「聞かせてほしいな。」

「図書館の司書とスクールカウンセラー。」

「ふうん。
紗智の夢はね、いつかは聖のお嫁さん。
でもその前に何かしたいんだよね。
その何かが今は解らなくて。」

「ゆっくり考えようよ。
私も話聞くし相談にも乗るから。」

「ゆずちゃん、大好き~っ。」

「紗智、暑いよ。」

まだ、高校一年の夏だから。

夢は遠くても少しずつ形にしていければいい。

その時の私はそう思っていた。
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