最初で最後の恋だから。ーセンセイー
秋も深まってくると学校の中は文化祭一色になった。

家庭科部は家庭科棟の入り口で出店することが決まり、
汐見先輩たちとお菓子の試作を重ねた。

「ゆずちゃん、紗智ちゃん。」

「はい。」

「はあい。」

「買い物に行ってくるね。」

先輩たちは足りなくなった材料の買い出しに行ってしまった。

家庭科室内には甘い香りが漂っている。

「ゆずちゃん、ティータイムにしない?」

「先輩たち帰ってきてからの方が良くない?」

「今、話したいんだもん。」

「解った。」

ミルクティーとココアを淹れてテーブルに座った。

「ゆずちゃん、最近しかめっ面してるから悩み事あるのかなって。」

「しかめっ面?」

「うん。」

「何か悩み事あるんなら聞くよ?」

どう話せばいいのだろう。

母親に解ってもらえないなんて。

「紗智は進路の事、親に話した?」

「うん、話したよ。」

きっとちゃんと理解ふ一人思っていた。

「経理クラスにしたって言ったら怒られた。
ちゃんと考えたの?って。
夢がないから就職すればいいっていうのは浅はかだって。」

「それでどうなったの?」

「んー、喧嘩っていうか冷戦っぽい感じ?」

「紗智もなんだ・・・。」

「紗智もってことはゆずちゃんもなんだ?」

「うん。」

私は母とのことを紗智に話した。

「心配かあ。」

「でも、お姉さんのいうことも一理あるかも。
気にしてもなかったら怒ったりしないもんね。
紗智も、もう一回ちゃんと話してみるからゆずちゃんもガンバレ!!」

「うん。」

話がまとまったころでティータイムを切り上げて片付けをしていると先輩たちが帰って来た。

「汐見先輩、お帰りなさい。」

「茉莉花先輩お帰りなさい~。」

「ただいま。」

先輩が帰ってくるとお菓子作りを再開して試作が沢山出来上がった。

「私たちじゃ食べきれないね。」

「ゆずちゃん、紗智ちゃん。
お持ち帰りする?」

二人して頷いてお菓子を選んだ。

「伊藤先生の分、渡してきてくれるかな。」

「ゆずちゃん。」

紗智が腕をつつく。

「行こ。」

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