最初で最後の恋だから。ーセンセイー
文化祭当日。

「ゆずちゃん、紗智ちゃん。」

「・・・?」

はい、と手に渡されたのは浴衣だった。

「わあ、浴衣だ~。」

「制服じゃ目立たないかなと思って吉見先生に相談したら貸してくださったの。
準備室で着替えてきてね。」

「紗智、自分で帯出来ない・・・。」

「私も。」

「じゃあ一緒に行こうか。」

浴衣に着替えると先輩は慣れた手つきで帯を締めてくれた。

「ゆずちゃんは紺色で紗智ちゃんは白の浴衣。
二人ともよく似合ってる。」

「先輩は黒ですよね。
大人っぽくて素敵です。」

「ありがとう。
二人とも文化祭楽しもうね。」

そう言うと先輩は準備室を出て行く。

慌てて追いかけた。

文化祭が始まるとあちこちから声が聞こえる。

家庭科部にもちょこちょこ人が来てくれた。

忙しいという程ではなかったけど、手に取って選んでる人の笑顔が嬉しかった。

「ね、ゆずちゃん。
・・・お腹空かない?」

時計を見ると12時を過ぎている。

「今は人もあんまり来ないし、出かけようよ。」

「汐見先輩がいいって言ったらね。」

汐見先輩は快く了解してくれたので私たちは職員室前の出店エリアに向かった。

「紗智のクラス盛況だね。」

「うん。」

「あ、紗智!」

クラスメートだと思われる女子が数名駆け寄って来た。

「浴衣いいな。」

「紗智似合うじゃん。」

紗智がクラスメートとおしゃべりを始めてしまうと私は輪の中に入れずその場に立っているしかなかった。

「柚依。」

「古賀君。」

「ボーっと立ってると危ない。」

「どうしてここに?」

「お昼になったから交代して休憩に入ったんだ。」

「5組のお好み焼きが美味しいって聞いたから来たら柚依がいて。
・・・浴衣なんだな。」

「家庭科部で出店してるから。
古賀君は制服なんだね。
和装カフェって聞いてたから浴衣着てるのかと思ってた。」

「クラスにいた時は着てたけど。」

「そうなんだ、見たかったな。」

「恥ずかしいからいいよ。
柚依はよく似合ってる。」

そう言った古賀君の顔はほんのりと赤かった。

「ありがとう。」

「あれぇ、哲君。」

おしゃべりが終わった紗智がお好み焼きを手に戻って来た。

「どうしてここにいるの??」

「休憩中。」

「どうして制服なの??」

紗智がほぼ私と同じ質問をしたので古賀君は同じ事を2回説明した。

「哲君も家庭科部においでよ。」

「お昼まだなんだろ?
・・・後で買いに行くよ。」

古賀君と別れた後、私と紗智は家庭科室でお昼にすることにした。
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