最初で最後の恋だから。ーセンセイー
ラックを移動しながら本の整理を始めた。

一人でやっていた時より楽に感じた。

古賀君が手の届きにくい場所を優先してやってくれてくれていたからだと気付いたのは終わりが見えた頃だった。

「ありがとう、古賀君。」

「何が?」

「一人でやってた時より楽だった。」

「須藤、お前さ・・・。」

続きの言葉は聞けなかった。

バタバタと遠くから足音が聞こえたかと思うとこの場所に居るはずのない人物が現れたからだ。

「古賀ぁっ、終わったかー??」

私はその声に恐怖を感じた。

全身が固まっていく。

(嫌だ、嫌だ、嫌だ・・・っ)

一刻も早くこの場から消え去りたかった。

「早く行こうぜ?
帰りによぉ・・・、ってかこいつ須藤じゃね?」

その声が目線が、私を捉えた。

蛇の舌がチロチロと捕食する前の品定めをするかのようだ。

(どうして・・・どうしてアイツが此処にいるの)

固まったまま言葉も出ない。

「須藤・・・?」

古賀君が心配そうな声を投げ掛ける。

「あれ、お前コイツと知り合い?
ガッコ違うじゃん。」

「ちょっとした知り合いだよ。」

「まーいいけど。
コイツには手ぇ出すなよ?
俺のおもちゃなんだからさ。」

ぐにゃりと視界が廻る。

「おもちゃってどういう事だよ。」

「言葉通り俺が好きな時に遊んで捨てるおもちゃさ。
・・・今日はこの辺にしといてやるよ。
今度は何して遊ぼうか考えとくぜ?」

気持ちの悪い笑みを浮かべてアイツは去っていった。

ペタリ。

全身から力の抜けた私はその場にへたり込んでしまった。
< 9 / 121 >

この作品をシェア

pagetop