徹生の部屋
#4 夏の女王様
* * *
昨夜、客間のベッドに入ったのが午前2時ごろ。
しばらくは鼻水が治まらなくてなかなか寝付けなかったけれど、自宅のベッドよりも数倍寝心地の好い寝具に疲労した身を沈めているうちに、気がついたらすっかり夏の太陽が昇っていた。
身支度をして居間に顔を出しても、まだ徹生さんは就寝中のようで不在だった。
起きてこないうちに朝食の用意をしてしまおう。
米びつにみつけた白米を炊飯器で炊いている間に、昨日スーパーで仕入れてきた食材でおかずを作る。
とはいっても、簡単なものばかりだ。ワカメと豆腐のお味噌汁に焼き鮭、だし巻き卵。納豆用にネギを刻んで、昨日の残りのキムチも小皿に盛った。
例のダイニングテーブルにコットン素材のランチョンマットを敷き、並べたお皿をみて首をひねる。
質素すぎたかな?自分的には十分豪華な朝ご飯なのだけれど、もうひと品くらい作ろうか。
冷蔵庫の中を覗いていたら、背後に気配を感じた。
「おはよう。早いな」
少し掠れ気味の声で挨拶した徹生さんは脇から手を伸ばし、ミネラルウォーターのペットボトルを抜き取る。
「早くはないですよ。もう10時すぎです」
「休みの日ぐらい、ゆっくりしたい」
水を飲みながら食堂に向かった後ろ姿に寝癖がついているのをみつけて、なんとなく嬉しくなる。
ちょうど炊き上がったご飯と温め直したお味噌汁をよそい食卓へと運ぶと、徹生さんはボイスレコーダーの再生音を聴いていた。
「朝もご飯で大丈夫でしたか」
「どちらでも。この家は三世代同居だからずっと和食だったし、独り暮らしを始めてからは、食ったり食わなかったりだしな」
「朝はちゃんと食べた方がいいですよ」
私の余計なお節介に、徹生さんが生返事をして食事が始まった。
炊きたて艶々のご飯は、噛めば噛むほど甘くなる。いいお味噌なんだろうな、という豊かな風味は、私の適当な作り方でも存分に感じられて美味しい。
私は少ししょっぱくなった卵焼きに顔をしかめ、徹生さんに無理して食べなくても構わないと伝えようと向かい側の席を見る。
小鉢に納豆とネギ、キムチを入れいてかき混ぜていた彼の手が、突然止まった。
昨夜、客間のベッドに入ったのが午前2時ごろ。
しばらくは鼻水が治まらなくてなかなか寝付けなかったけれど、自宅のベッドよりも数倍寝心地の好い寝具に疲労した身を沈めているうちに、気がついたらすっかり夏の太陽が昇っていた。
身支度をして居間に顔を出しても、まだ徹生さんは就寝中のようで不在だった。
起きてこないうちに朝食の用意をしてしまおう。
米びつにみつけた白米を炊飯器で炊いている間に、昨日スーパーで仕入れてきた食材でおかずを作る。
とはいっても、簡単なものばかりだ。ワカメと豆腐のお味噌汁に焼き鮭、だし巻き卵。納豆用にネギを刻んで、昨日の残りのキムチも小皿に盛った。
例のダイニングテーブルにコットン素材のランチョンマットを敷き、並べたお皿をみて首をひねる。
質素すぎたかな?自分的には十分豪華な朝ご飯なのだけれど、もうひと品くらい作ろうか。
冷蔵庫の中を覗いていたら、背後に気配を感じた。
「おはよう。早いな」
少し掠れ気味の声で挨拶した徹生さんは脇から手を伸ばし、ミネラルウォーターのペットボトルを抜き取る。
「早くはないですよ。もう10時すぎです」
「休みの日ぐらい、ゆっくりしたい」
水を飲みながら食堂に向かった後ろ姿に寝癖がついているのをみつけて、なんとなく嬉しくなる。
ちょうど炊き上がったご飯と温め直したお味噌汁をよそい食卓へと運ぶと、徹生さんはボイスレコーダーの再生音を聴いていた。
「朝もご飯で大丈夫でしたか」
「どちらでも。この家は三世代同居だからずっと和食だったし、独り暮らしを始めてからは、食ったり食わなかったりだしな」
「朝はちゃんと食べた方がいいですよ」
私の余計なお節介に、徹生さんが生返事をして食事が始まった。
炊きたて艶々のご飯は、噛めば噛むほど甘くなる。いいお味噌なんだろうな、という豊かな風味は、私の適当な作り方でも存分に感じられて美味しい。
私は少ししょっぱくなった卵焼きに顔をしかめ、徹生さんに無理して食べなくても構わないと伝えようと向かい側の席を見る。
小鉢に納豆とネギ、キムチを入れいてかき混ぜていた彼の手が、突然止まった。