酷く懐かしい場所
第一章 雨降る日
あぁ、今年もこの季節がやってきた…
私の大嫌いな『梅雨』
このまとわりつく暑さといいジメジメさといい
いったい何なのよ!!
そんなことを思いながら駅の改札をぬける
街は昨日の澄んだ青空とはうって変わり今にでも災いが降りかかっ
てきそうなほどの不気味さを帯びた真っ黒な雲で覆われていた
私がこれほどまでに梅雨を嫌うのには訳がある
訳といっても人から言わせてもらえば、なんだそんなことか
といわれてしまいそうな本当にくだらな…いやっ!くだらなくなんて
ない!
名前さえ…名前さえ違ったならば…
私の名前は「梅雨」と書いて「めう」と読む。漢字さえ気にしなけ
れば案外キラキラネームなのではないかと自分でも思っているほど
なのだが、問題はこの漢字なのだ。
なぜ父と母は私にこんな名前をと思うが…答えは案外簡単なもので
「梅雨の日に生まれたから」だそうだ
幼いころはこの名前が大好きで梅雨の日になると毎日お気に入りの
傘をさし雨靴をはいて近くの公園に何をするわけでもなく通ってい
たり、なんてこともあった
けれど物心ついてくると学校でだんだんとこの名前が男子達および
一部の女子等からからかわれるようになり、いつの間にか一番大好
きだった名前は「一番大っ嫌いな名前」へと変わっていったのだっ
た
「…もうっ、本当に憂鬱ね」
過去のことを振り返っていると気持ちが沈んだ
今日は金曜日、明日明後日は待ちに待った休日だ
そう考えると気持ちも少しは上向きになっていく
本来ならばこれから、近くのカフェで友人を食事をとる予定だった
のだが彼女は急な用事が入ってしまったようで
私は言葉どおりドタキャンをされてしまったのだった
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