HAZY MOON
出逢い

わたしがそれを知ったのは、一年前のことだった。


母の死。


知らせたのは、青ざめた顔で目を潤ませた祖母だった。


ただそれを他人事のように、ぼんやりと見つめていた。



なんでこの人は、こんなひどく悲しげな表情をしているんだろう……?


この祖母は、わたしの亡くなった父の母親。

義理の、それも父が亡くなる数年の間だけ娘だった人物に何故そんなに全身で悲しめるのか……。



理解に苦しむ……。


でも、本当に理解出来ないのは……実の母の死を無感情に受け流しているわたしの方かもしれない。



……だって、悲しむにもわたしには母との思い出があまりにも少なすぎるから。



わたしが十七歳になる今まで暮らしてきたのは、三歳の時に亡くなった父方の祖父母の家だった。



いくつかの会社を経営する祖父母は、大きな家に身よりのなくなった若い母親と幼いわたしを迎え入れてくれた。


何不自由ない生活。

祖父母は亡くなった父の分までわたしを可愛がってくれた。

父は居なくても、祖父母や母が居る。
幼いながらに、それをわたしは心強く思っていた。



しかし、それも長くは続かない。


三年も経たないうちに、母は再婚相手を見つけ、わたしと祖父母の前から消えてしまった。


わたしは……捨てられた。


だから、母の死なんてわたしには関係無い。


あれから一度だってわたしの前に現れることの無かった母は、十二年前に死んだも同然だから……。
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