HAZY MOON
「雫希。おはよう」


軽いモヤモヤを胸に残しながら、少し歩いたところで同じ高校の制服を着た男の子に声を掛けられる。


「おはよう、尊(たける)」


柔らかく微笑む彼に挨拶を軽く返した。

幼なじみの宮越 尊。
わたしより一つ年上なせいか、いつも穏やかで落ち着いている。
人当たりの良い性格に、女子ウケし易い顔立ち。

しかし、年中顔を合わせているわたしには、どうでも良い情報に過ぎない。


「あれ? 機嫌悪い?」


「……わかってるなら聞かないで」



スタスタと横を通り過ぎていくわたしにゆっくりと追い付き、尊は微笑みを携えたままこちらを見つめた。


それに気付きながら、ワザと無視して正面を向いたままでいる。



「あっ、そっか。……もうすぐ一年、か」


「うるさいっ」



そしてワザとわたしの神経を逆撫でする爽やかな笑顔が近付いた。

笑顔で嫌みを言う、一番質の悪いタイプの人間だ……。


「行かないの? お墓参り」


尊の一言で、わたしの不機嫌は更に悪化する。


「余計なお世話っ。先行くからっ」



尊を睨み付け、大人げない程トゲトゲしく言い放つ。

それでも微笑みを絶やさない彼に一層苛つき、足を早めた。

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