HAZY MOON
あぁ……。
今日は朝から不愉快で仕方無い。


イライラを全面に出した顔と溜め息をつきながら、わたしは教室の自分の席に腰を下ろした。


ガヤガヤとうるさい教室。
いつもの女子の輪にも、入る気にならない。

朝から机に突っ伏して、近付くなオーラを全開にした。

気紛れなお嬢様キャラで通ってるわたしだから、朝から不機嫌でも何ら不思議ではないだろう。



程なくして本鈴が鳴り、騒がしかった教室がゆっくりと静まる。

一限目の授業は世界史。


顔を上げるタイミングで、机から教科書を取り出した。



「……号令」

本鈴から二分程経った頃、


「キャーッ!」

「梶先生っ」


教室に入ってきた人物に、何故か女子たちの黄色い声が上がる。



開いた扉から入ってきたのは、勿論いつもの中年教師では無かった。



背の高い彼は、白の綿シャツに黒いパンツ姿。
大きめのサンダルを突っかけ、擦り足で教卓の前に立つ。

彼は、梶 春臣(はるおみ)。
去年から産休に入った先生の代わりに、ウチの高校で美術を受け持っている。


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