JOKER
過去のあたしもそんな事言ってたっけ?走るのが大好きだったあたし…。

タイムが0.1秒でも早くなってたら飛ぶほど喜んでたっけ?


試合前のあの緊張感…。


「うん…。陸上は楽しいね。」


あたしは少し微笑みながら言った。


あたしの心の中で
走りたい、でも走るのが怖いという思いが交差する。


走ったら何か変わる?
でも、本当に走れるの?


「結花、やっぱ俺秘密事むいてないから言うわ。」


そう言ってきた璃空。


「お前がちょうど陸上辞めた時、結花のお母さん、紗枝さんが俺の家に来てたんだ。」


紗枝さんはあたしのお母さんのこと。


「そん時、俺の母さんに結花が怪我して走るのが怖くなったんだ。って言ったのを偶然聞いてしまったんだよ。」


いつの間にか寝転がっていた璃空はあたしの横に並んでいた。


中学生の時はあたしのが背高かったのにもう抜かされてるんだ…。


璃空と話す時見上げないとダメだもんね。


璃空から話を聞いてあたしは否定する気もないし弁解しようと思わなかった。


「うん、その通りだよ。あたしは走るのが今でも怖い。それが何?」


少しヤケになってしまった言い方。璃空だけにはバレてほしくなかった。


ずいぶん前からあたしが怖くて走れないということも知ってた璃空。
今までどんな気持ちであたしに接してきてくれたんだろうか。
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