JOKER
あたしは職員室を出ていった後、教室には帰らずに屋上へと繋がる階段を昇った。


陸上…か。屋上へ行きあたしは上からグラウンドを見下ろした。颯爽と走る璃空の姿が見えた気がした。


位置についてよーいドンっ!の合図で走る陸上。あたしは瞳を閉じて、過去の陸上の試合を思いだした。


ガヤガヤとざわめく競技場。競技場の少し離れたところの芝生では試合を終えた人が寝転んでいたっけ?


雲1つない空で、本当に秋?って聞きたくなるほどの暑さだった。


競技場全体は熱気に包まれていてみんな緊張してたっけ。


不思議と中学生の時の大会をあたしは思い出していた。


カチャ。


思い出を思い出しているうちに、屋上の扉の開く音がした。今は授業中。


誰かサボろうとしてるのかな。
あたしもサボってるから人の事言えないけどさ。


「あれ、結花。授業でてないと思ったらこんなところ居たのかよ。」


いつもと変わらない優しい表情で笑いながらあたしに近づいて来た璃空。


「あ、うん。顧問に呼ばれた後に授業出るのめんどくさくなっちゃってサボってる。」


あたしは少し苦笑しながら言った。
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