JOKER
言ってもどうせ《そっか、大丈夫?》って言われるだけ。なら言わない方がいい。そう思って誰にも言わなかった。


「挫折ね〜。あんだけ走るの大好きだった結花がそんな簡単に挫折するはずないと思うんだけどなー。」


少し、挑発のかかった言い方をする璃空。
璃空だけには言いたくない。


走るのが怖いなんて。
絶対に言えない。


「ま、話したくないなら話さなくてもいいけど。話したい時になったら言ってよ。」


璃空はそう言うと再び寝転んで目を閉じていた。あたしはそんな璃空を見ながら、璃空にバレないように溜め息をついた。


いつも、璃空はそう。
あたしに聞きたいことを聞いてきてあたしが何も言わなくなったら話したくなった時でいいよ。って言ってくれる。


そんなこと言われたら話すしかないじゃんね…?


でも、今の璃空には話せない。せめて試合が終わってからじゃないと…。


あたしはそう考えながら制服のスカートのポケットから勇気がでると言われているパワーストーンを出して決意した。


「なあ、結花。」


眠たそうな声であたしを呼ぶ璃空。


「ん、何?」


あたしは少し微笑みながら璃空を見た。眠たそうにしてる璃空は本当に可愛い。


「陸上って辛いけど楽しいよな。頑張れば頑張るほどタイムは良くなるし、走った後はなんかスッキリするし…。」


左手を空にあげながら言う璃空。あたしはそんな璃空の言葉を聞きながらその場に立ち尽くした。
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