黒の村娘といにしえの赤鬼

「まず君たち女性は男のような力は持ち合わせていない。大事なのは敵の弱点を知ること。人間なら男も女も弱点は同じだからね」
「はい、質問です」
「なんだい小夜」
「相手は鬼でしょ?鬼の弱点を教えてよ」

小夜の言葉に皆うんうんと頷く。


「ああ皆は知らなかっただろうが、鬼の姿は人間と同じなんだ。ただ髪の色や瞳の色が違うだけなんだよ」


「嘘…!」

私たちは同じような反応をして驚いた。
だって童話で聞いていた鬼の姿は怪物そのもので、人間の姿なんて微塵も感じられなかったから。
鬼は生きていると言い、人の姿をしていると言い…
子どもの頃には知らなかった事実が次々と明らかになっていく。


「さ、気を取り直して始めるとするよ」

改めておじさんが声をあげる。


最初に教えられたのはみぞおちの部分の事。
他にもこめかみや喉仏など様々あるが、狙いやすいのはみぞおちだろう。
強い衝撃を与えることで呼吸困難にして身動きを止める事ができる。
全体的に人間の体の真ん中あたりに急所があるらしい。


「あと男だけの急所があるぞ。みぞおちを狙えない時はそこを蹴り上げてみるといい!」

そう言っておじさんが大声で笑った。

「やだ、秋彦様」
「お父様…」

皆は笑ったり、小夜は苦笑いをしていたけれど私はひとり心の中で真面目に記憶していた。
だってむしろみぞおちより簡単にできそうじゃない。
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