黒の村娘といにしえの赤鬼
と、その時、村の入口から一人の男の人が走ってきた。
何やら焦っているようだけどどうしたんだろう。
「おーい!楠木さんちの娘さん…珠々ちゃんはいるかい?!」
「わ、私です!」
「ああ良かった。千之助さんがよ…倒れたんだ」
「そんな…っ」
やっぱり無理しすぎたんだ。
だから私が代わりに行くと言ったのに…!
でも過ぎたことは仕方ない。
今は父さんの無事を確かめるのが先。
「今父さんは…」
「家に運んでるよ。珠々ちゃんも早く来て」
「分かりました」
そう言うと伝達に来たおじさんは戻っていった。
「珠々…」
小夜が心配そうに見つめている。
「ごめん小夜、おじさん。私家に帰りますね」
「ああ、早く行ってあげて」
おじさんの言葉に頷くと持っていた木刀を小夜に預けて家に向かって走り出した。
「父さん…」
倒れるなんてよっぽど体が辛かったのだろう。
基本仕事に対して真面目だから、酷使して体が悲鳴を上げていたんだ。
それに気づけなかった私…なんてバカなんだ。