黒の村娘といにしえの赤鬼
第一章 鬼伝説の村


世は戦国時代と呼ばれる時代。


私、楠木 珠々(くすのき すず)が暮らす村はいくつもの山々に囲まれた麓にある小さな村。

田舎すぎて俗世間と関わらないこの村は、戦いに巻き込まれる事なく、ひっそりと佇むように暮らしてきた。


土壌も肥えていて作物は良く育つし、山から流れてくる水は澄んでいてとても綺麗だ。




でも私のような若者の中には、田舎なこの村に閉じこもるのが嫌で外に出たがる人もいる。


しかしそれは輿入れする時や、商売のために出る時など特別な許可を得た者だけしか許されなかった。




どうして勝手に出てはいけないのかというと、この村にだけ伝わる昔話があるからだ。




それは鬼を倒したという伝説。



子どもの頃から童話として語り継がれている。

私たちは鬼がいたという伝説を守るためと、外部に情報が漏れないようにと村長(むらおさ)である一条家が決めたのだ。




けれど私は、鬼の伝説が本当にあったとしても無かったとしても、村の外に出ようとは思わない。

毎日平凡な日常が続けばそれでいいのだから。

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