黒の村娘といにしえの赤鬼

翌日の朝早く、私は服装や準備を整えて裏山へ向かった。
私が帰るまで父さんのことが心配だったけど、そう何日もいないわけじゃない。
それに子どもじゃないから自分のことくらいできると言い張って送り出してくれた。
そんな様子に少しだけ安心して私はどんどん山へと入っていく。
幼い頃はよく小夜と駆け回っていてからある程度地理は理解しているつもりだ。
父さんに書いてもらった絵を片手に辺りをくまなく探し歩くこと三時間…。


「ぜんっぜん見つからない…」


大きな岩に腰掛けながら大きなため息をついた。
中々見つからないとは思っていたけど、ここまで苦戦するとは思わなかった。

「でも父さんを救うため、弱音は吐いてられないわ」

自分を鼓舞しながら、父さんが喜ぶ姿を想像しながら、再び足を動かし続ける。
最初はそれだけで頑張れた。
しかし山の道のりは体力を奪っていく。
疲労も溜まっていくし、一人山の中にいる事で段々と心細さを感じてしまう。
< 20 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop