黒の村娘といにしえの赤鬼

「あ、あなたは…」

赤く染まった髪の毛、光り輝くような金色の瞳…。

その姿から目の前に立つ男は人間では無いと悟った。


「助けてもらったのに礼もできないのか」

そこで初めて男は声を出した。
そこまで高くもなく低くもなく、ただ威厳を感じるはっきりとした声に私ははっとした。

「あ…助けてもらって…ありがとうございます」

この人は鬼なんだ、でも何で人間の私を助けたのだろう。
というかどうして私は鬼に出会ってしまったのだろう。
そもそも鬼は本当にいたんだ…。

様々な疑問が頭を駆け巡る。


その場から動けなくてただただ座り込んでいると男が口を開いた。


「お前、人間だろう。どうしてここに来たんだ」
「どうしてって…迷ってしまって…」
「迷っただと?」

男は信じられないような表情を浮かべて驚いているようだった。

「人間が迷い込むなんて信じられないな…。まあともかく、俺に会ったことは誰にも言うな。さもないと…」
「は、はい…!絶対誰にも言いませんから!」

その言葉の先が想像できて慌てて言葉をついた。
< 23 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop