黒の村娘といにしえの赤鬼
慣れた足取りで竹林にたどり着く。
今日もいい天気で竹の葉がざわざわと風に揺れていた。
でもやはり人の姿は見えない。
そこで思い切って大声を出してみることにした。
「おーい!誰かいませんかー!」
…何も反応はなし。
「あ、鬼なんだからこれはどうかな。…おーにさんこーちら!てーのなーるほーうへー!」
ふざけ半分で子どもの頃に戻ったように叫んでみる。
我ながら呆れた策だとはは…と笑った。
「こんな子どもだまし、通じるわけないよね」
諦め半分でため息をつくと、すぐ近くでざわざわと一部分の竹が揺れている事に気がついた。
その音はどんどん遠ざかっていくようで私は身を隠しながら音の正体を確かめようとする。
「あ、あれは…」
男が二人、奥へ向かって歩いていく姿が見えた。
前に会った赤い鬼ではない。
でも青髪と金髪の姿はどう見ても人間のものではない事は分かった。
「いろんな色があるのね…ってそんな事考えてる場合じゃない!」
ぼーっとしていたら危うく見失いそうになり、慌てて後を追う。
あの二人について行けば赤い鬼にも会えるかもしれない。
そんな期待をしつつ、ゆっくりと竹林の中を進むのだった。