黒の村娘といにしえの赤鬼
「さて、どうしようかな…」
「…おい!怪しいやつ!誰だ!」
「えっ!?私!?」
思わず後ろを振り返るとすぐそこまで鬼二人がやってきていた。
気づかれないように離れた所にいたはずなのに…。
黒髪だから見つかってしまったのかな。
「…っ!こいつ、髪が黒い…目も…」
やっぱり髪色と瞳が珍しいのか私を見る警戒感が強まる二人。
一人の男が驚いて私を見つめると、もう一人は私の手首を掴んで縄をかける。
「ちょっ…いきなり何するのよ!」
確かに鬼にとっては怪しい人かもしれないけど何もしていないのにこの仕打ちはどうかと思う。
「正直に答えろ。お前は人間だな?」
「…はい」
ここで嘘をついても何の意味もない。
髪の色と瞳の色で分かるのだから。
私は正直に答えた。
「やはりそうか。でもなぜここへ来られたんだ?」
「もしかしたら結界が弱くなっているとか」
「そんな…有り得るのか?」
男二人はよく分からない話をしていて、私にはどういう意味なのかさっぱり分からなかった。
結界って…何?
「とりあえず人間は連れて行こう」
「そうだな。…女、こっちへ来い」
一段落話がついたところで私は強引に手首を掴まれて村の中へ連れて行かれそうになる。
「待って!私はお礼を言うためにここに来ただけで!髪が赤くて瞳が金色の人に会わせて下さい!」
それが叶えばすぐに帰るつもりだった。
ここまで来て捕まりたくない。
すると男は驚いた顔をした。
「お前のような人間ごときにあの方には会わせられない。それに礼などとおかしな話だ。あの方がお前などに何か施しでもしたというのか」
「そうだ、そうだ。それに人間があの方に会えるはずがない。礼などと嘘をついて我々に危害を加えるつもりだろう」
「そんな…私はそんなことしません!」
「何度言っても無駄だ。人間の言葉など信じられん。大人しくしないとそのうるさい口を塞ぐぞ」
「…っ」
これ以上の抵抗をしたら私の立場が危うくなると思ってこれ以上何も言えなかった。