黒の村娘といにしえの赤鬼
「父さん!こっちは耕し終わったよ!」
くわを地面におろして汗をぬぐう。
まだ春だというのに体を動かすととても暑い。
「助かるよ。あとは父さんに任せて野菜を洗っておくれ」
「はーい」
お言葉に甘えて日陰にある井戸へ向かった。
野菜を洗う前にまず水をひとくち口に含む。
「あーおいしい!」
汗をかいた後の水は極上な味わいだ。
一休みすると足元に転がっている野菜たちを見る。
今日もたくさんの野菜が美味しそうに実を結んだ。
農家である私の家は毎日朝に収穫して、同時に畑の手入れをする。
そして父さんが野菜を隣村に売りに行くという日々だ。
たまに隣村でお土産を買ってきてくれるからそれを楽しみにしながら夕暮れまで待つ。
もちろん夕食は私がつくる担当。
朝に採れた野菜と、父さんが買ってくる食材を合わせてつくっている。