黒の村娘といにしえの赤鬼
男たちに連れられて鬼の集落へと入っていく。
村人たちは道行く私が珍しいのか皆驚いた表情と、それから憎悪の目が向けられているのに気づいた。
私たち人間が…小夜が鬼を嫌うように鬼たちも人間が憎くてたまらないのだろう。
「おい、あれが人間だってよ」
「初めて見た…鬼殺しの野蛮な人間め」
ひそひそと私に暴言を吐く鬼の声が聞こえた。
大昔の出来事で私が何かしたわけでもないのに、人間だからというだけでこう思われているのだと心が痛んだ。
歩くことしばらく。
連れてこられたのは牢獄だった。
建物の中に入るとどんどん地下に進んでいく。
それにここの空気はじめじめと湿気を帯びていてカビ臭い。
昼間なのに薄暗くて不気味な雰囲気があった。
「ここに入れ」
そう言いつつ私の返事を待たずに私は牢屋の中に入れられ、鍵を閉められた。
「あの…私はここから出してもらえるのでしょうか」
「さあ…どうだろうな。日向様次第だ」
男はそう言うと見張りを二人つけて牢屋を出ていく。
「日向って誰だろう…。それに私は無事に帰れるのかな…」
そろそろ夕暮れ時なはずだ。
私が帰って来ないと父さんは気づく頃かな。
早く帰りたい。
こんなことになるなら期待と好奇心で来なければよかった。
私はため息をつきながら冷たい床に座り込んだ。
ひんやりとした冷たさと石の固さですぐお尻が痛くなりそう。
早く出たいけど見張りもいるから下手に動けない。
私は暗い気持ちを抱えたまま一晩過ごすのだった。