黒の村娘といにしえの赤鬼
いつもは午後になると家の事をしたり、まったりして過ごすのだけど、今日は幼なじみに誘われている。
小高い丘にある私の家から一気に坂を下って村の広場に出ると幼なじみは手を振って待っていた。
「遅いわよ珠々!」
「ごめんなさい、小夜」
この子の名前は一条小夜(いちじょう さよ)。
同い年の十七歳。
村を治める一族、一条家の長女で一人っ子。
好奇心旺盛で、元気いっぱいな女の子だ。
「まあそんなに待ってはいないけど」
「何だ、よかった」
もしかして長時間待っていたのかと不安になっていたから助かった。
前、私が読書に夢中になっていたことがあって大遅刻した日があるから小夜を怒らせてはいけないのだ。
「それで、今日はどうしたの?」
「私の家に遊びに来てよ。今日はお父様から伝説の話を聞く事になってるの。ありがたーい話だから珠々も誘っていいか聞いたらいいって言ってくれたのよ」
「わ、わざわざありがとう…」
はっきり言って私は鬼にまつわる話なんて興味がない。
大昔の話だからっていうのもあるけど、毎回同じ内容だからさすがに飽きてしまう。
でも小夜は鬼を倒した一条家の末裔だし、時期村長だから毎日のように教育?を受けているのかな。
まあせっかくのお誘いだし…私はお茶菓子でも楽しみに行こうかな。
「良かった!それじゃあ行きましょ」
そう言うと小夜は上機嫌で私の手を取って家に向かった。