黒の村娘といにしえの赤鬼
「お父様嘘よね!?生きてたら…また村を襲って来るっていう事になるわよね!?」
小夜は取り乱しておじさんの肩を掴んで揺すっていた。
小夜の言う通り、本当ならば歴史がまた繰り返されるという事になる。
「落ち着きなさい小夜!」
そう言って小夜の目を見て背中をさするおじさん。
すると小夜は我に返ったようで、ごめんなさいと呟いた。
「よく考えてみなさい。私たちの先祖が鬼を倒したのは何百年も前だ。そこから今現在まで鬼は存在しているはずなのにあれから一度も襲ってこないだろう?ここからは憶測なんだが…鬼は今、復讐のために力を蓄えている最中に違いないと考えているんだ」
「…という事は…近いうちにまた村を…?」
何百年も前という事だからとっくに力を備えて今にも攻め込んでくるかもしれない。
急に現実味を帯びてきて、私は鳥肌が立った。
村の生活が…私たちの平穏が暮らしが奪われてしまうなんて…考えたくもない。
「珠々の言う通りになるかもしれない。だから私たちも鬼を迎え撃つために力をつけようと話していたんだ」
「それはどういう…?」
「もちろんそのままの意味だよ。剣を取り、来たるべき敵に供えるんだ。…と言っても男だけだから二人には関係ないけどね」
「嫌!私にも教えて!」
大きな声できっぱり言い張ったのは小夜だった。
真剣な眼差しでおじさんを見つめている。
「しかし…小夜は時期村長だ。万が一小夜が傷つくような事があれば…」
「でも…」
そう言いつつ迷っているようだった。
小夜は無理を言いつつもちゃんと自分の立場をわきまえているんだ。
どうにかできないかと私も考えているとひとつの考えが頭に浮かんだ。
「あの…護身術だったらいいんじゃ…。それに私も覚えていて損はないだろうし」
私の考えに二人の表情はぱっと明るくなった。
「いいじゃないか!それなら安心だ」
「いい事言うじゃない珠々!それじゃあ早速明日から始めましょ。今日と同じ時間に広場に集合ね」
こうして私と小夜は護身術を習う事に決まった。
帰り道私は頭が冷えたようで、なんであんな事を言ってしまったのだろうと後悔したけど、今日の、話を聞いてはいても立ってもいられなくなった。
「はぁ…仕方ないか」
ため息をつきつつもなんだかんだ明日を楽しみにしている私がいた。
空にはもう星が見え始めている。
いつもより帰りが遅くなったし、早く帰って夕食をつくろうと思い、駆け足で家に帰った。