柊くんはやっぱり意地悪だ
1. 幼馴染み
私の住んでいる地域は都会でも田舎でもない平凡な場所。

特にこれといって目立ったものがあるわけでもないし
有名な観光スポットがあるわけでもない。

でも毎朝起きて部屋の窓を開けた瞬間に放つ
焼きたてのパンの美味しそうな匂いは格別だ。

私、藤堂 杏(とうどう あん)は2週間前に
アメリカからこの生まれ育った街へと引っ越してきた
いわゆる「帰国子女」だった。

コンコンっ…!

顔を覗かせたのはお母さんだった。

「おはよう杏、もう朝ごはん出来てるわよ」

「分かってる!今行く!」

そう言ってお母さんの後を追い私はリビングへと向かった。
リビングへ入ると私の好きなあのパンの香りがして食欲をそそった。

「もう、杏ったらマイペースなんだから!
お父さんなんてもう仕事に出掛けたわよ?」

「え!?もうそんな時間なの!?」

時計を見ると7時半をさしていた。

待ってよ!!今日から新学期なのに!
こうしちゃいられない、急いで家を出なくっちゃ!

「お弁当作ったから持っていきなさいね」

そう言って赤いギンガムチェックの包みに入った
お弁当箱をお母さんが手渡してきた。

「お母さんありがとう!行ってきます!」

私はクロワッサンを口にめいいっぱい
頬張りつつ家を後にした。
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