鬼羅 〜最弱の暴走族〜
嘘が真実となる時
「それにしても…こんなところ、誰かに見られでもしたら大変だ」
「…何故?」
「ん…?ああ。あんたは最近碧緋に来たから知らないのか。鬼羅と碧緋は、ずっと敵対関係にあるんだよ。_______________10年前のあの日から」
「それって、例の…」
「ご察しの通り。10年前…きらにぃが率いた鬼羅を壊滅させたのは、碧緋だ。」
「鳳蝶」 それが碧緋のかつての名前だった。
同盟を破り、卑怯な真似で鬼羅を壊滅させ、 暴走族のトップに君臨した「鳳蝶」。
きらにぃが眠った後も 鬼羅を狙うものは少なくなかった。
その殆どが鳳蝶の傘下で その頃の総長不在、弱りきった鬼羅ではもうどうすることも出来ない。
そんな時、きらにぃをバイクで撥ね飛ばしたにも関わらず何の罪に問われることもなく、のうのうと鳳蝶の総長を続けていた「相川柊磨」は鬼羅にこんな条件を提示したんだ。
”鳳蝶はもう二度と鬼羅を襲撃しない事を誓う”
”その代わり 鬼羅は絶対に鳳蝶に関わるな”
”お前らがその条件を守り続ける限りは 鬼羅はいいや、綺羅は安全な場所に居られるぜ…?”
「何故相川柊磨がそんな条件を出したのかは知らないけど。バレたらあんたも俺も、鬼羅もおしまいなんだわ。」
まあ、こんな時間にこんな場所誰かがうろつくことなんて考えられないけどさ、なんて笑ってみせる。
「……」
「長谷川…?」
「え…あぁ、そうね。私たちはきっと関わるべきじゃない。」
何かを呆気に取られていた長谷川は、ハッとすると冷たくそう言った。
…どうしたんだ?
「それじゃ、また________…で」
スッと立ち上がり 長谷川は俺に何かを伝えた。
けれどあまりにも小さな声で肝心な部分が聞き取れない
キィ… パタン
寂しげな扉の音と共に 彼女は屋上を去って言った。