お姉ちゃん、ごめんね…
20歳のお姉ちゃんの振り袖姿は本当に綺麗だった。


私もいつかあんなふうに着物を着て、髪を華やかにして、キラキラの日を家族みんなで過ごせると思っていた。



夜には彼氏とご飯を食べに行くと言いながら鼻歌を歌っていたお姉ちゃん。



お姉ちゃんの振り袖の写真は、母の寝室に飾ってある。

隣には私でなくて、翔とお姉ちゃんの姿のもの。


いつ見ても、本当にお似合いだと今でも思う。




だんだん私から遠くなって行くお姉ちゃん。


だんだん…

だんだん…私の隣からいなくなっていく。


そんなことわかっていた。


それなりの歳になれば、お姉ちゃんだっていつか結婚をしてこの家から出ていくことくらい。



わかっていたよ。

わかっていたけど、やっぱり辛かった。


なんでも話せたお姉ちゃんが家からいなくなったのは、私が高校1年の12月だった。


22歳のお姉ちゃん。
翔と付き合って2年半以上経っていた頃同棲を始めた。


二人とも大学を卒業後の就職も決まっていた。新居でゆっくりクリスマスを祝いたいと、トントン拍子で引越しをしていった。


はじめは渋っていた父も、引越しを手伝い、笑顔でお姉ちゃんを頼んだぞって翔の肩をトンっとした。


母が耳元で何かをお姉ちゃんに言っていたけど、何の話かはわからない。



顔を赤くしたお姉ちゃんは大丈夫だからって母に恥ずかしそうに言っていた。




あとで母に聞いたら教えてくれた。



「子供はまだ作っちゃダメだからね」って。


「ふーん。そんなことか!」


「ゆうなもわかった?子供はまだ作っちゃダメだからね!!」


「はぁ!?つ、つくらないよ!」



慌てて部屋に戻りケータイを触り、お気に入りの音楽を聞く。



なんてことを言い出す!彼氏ができたことバレてる!








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