午前0時のシンデレラ

不審者でも見るような顔つきに、自分の社のトップも知らないのかと思う。

「俺は、この会社の……」

言いかけたのを、

「ごめんなさい、急いでるんです! もう終電がなくなってしまうんで!」

駆け出して行ってしまう。

「おい、待てって……!」

追いかけようとした時、ガタっという音と、「あっ…」という声が耳に入った。

数段を降りて行ってみると、折れた片方のハイヒールを手にして、彼女が呆然としていた。


< 10 / 171 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop