午前0時のシンデレラ
「それじゃあ、おやすみなさい」
抱こうとした腕をすり抜けて行ってしまう彼女の、その長い髪が一瞬なびいて指の先に触れた。
「…あっ、ああ…おやすみ…」
応えて、手を自分の方へ引き戻して、
「……ありがとう。俺も、嬉しかった……」
と、独り呟いた。
……階段を駆け下りて行く彼女の後ろ姿を眺めながら、
0時には帰って行ってしまうあのシンデレラを、いつかきっと帰さずにもいられればと……そう、思った……。