午前0時のシンデレラ

胸ポケットから名刺を出して手渡すと、

「あ…本当に……代表取締役 一条 京生(いちじょう きょうせい)って……すいません! 社長とも知らないで、私……」

慌てたように頭を下げた。

「別にいい」

謝られて、それ以上は咎める気にもならなくて、

「それより、そのヒールじゃ帰れないだろ? 俺は車で来てるから、送ってやるよ」

と、話した。

「でも、社長になんて申し訳ないですから……」

顔も上げないままで言う彼女を、下から覗き込むように見る。

「いいと言っている。社長の命令は受け入れるもんだろ?」

「……。……命令でしたら」

間を置いて、答えると、

「……あの、それではよろしくお願いします」

と、彼女はもう一度頭を下げた。


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