午前0時のシンデレラ
「社長は、どうぞ先に行かれてください」
その笑顔から目が離せなくなって、
「あ、ああ…」
言葉に詰まって、とっさに視線をはずすと、無言のまま歩き出した。
後ろから聴こえてくる靴音に、
(……あんなに可愛く笑うとか、反則だろうが……)
そう密かに感じて、自分の思いもよらない感情に、少なからずの動揺を覚えた。
俺が、見とれるとか……あるわけないよな。
これでも、交遊関係はほどほどにこなしてきたんだ……今さら、女に見とれるとか……そんなこと……。
ぼんやりと考えながら歩いていると、やがて駐車場に着いて、
「こっちだ…」
と、彼女の方を振り返った。