午前0時のシンデレラ

「はい…すいませんでした、社長」

頭を下げるのに、

「また謝るのか? もうすいませんはいい」

言って、

「そう言えば、名前をまだ聞いてなかったな…俺は、さっき名刺を渡したが……君、名前は?」

うつむけた横顔に視線を向けた。

「庶務課の浅見 栞(あさみ しおり)です。ご挨拶が遅れてしまって、すいま……」

「……謝るなって」

言葉の途中で遮る。

「庶務の浅見さんか、今日のようなことはないように、それとなく課長に通達しておくから」

「……ありがとうございます」

やっと顔を上げて表情が和らぐのに、

「ようやく落ち着いてくれたか?」

声をかけて、

「家は、どこなんだ?」

と、尋ねる。

「もう少し先です……」

そう言って、伝えられた地名に、「わかった」と、アクセルを踏み込んだ。



< 20 / 171 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop