午前0時のシンデレラ
「はい…すいませんでした、社長」
頭を下げるのに、
「また謝るのか? もうすいませんはいい」
言って、
「そう言えば、名前をまだ聞いてなかったな…俺は、さっき名刺を渡したが……君、名前は?」
うつむけた横顔に視線を向けた。
「庶務課の浅見 栞(あさみ しおり)です。ご挨拶が遅れてしまって、すいま……」
「……謝るなって」
言葉の途中で遮る。
「庶務の浅見さんか、今日のようなことはないように、それとなく課長に通達しておくから」
「……ありがとうございます」
やっと顔を上げて表情が和らぐのに、
「ようやく落ち着いてくれたか?」
声をかけて、
「家は、どこなんだ?」
と、尋ねる。
「もう少し先です……」
そう言って、伝えられた地名に、「わかった」と、アクセルを踏み込んだ。