午前0時のシンデレラ
ーー沈黙が流れる中、
不意に彼女が、「あの、もうここでいいです」と、口にした。
「家まで送ってやるよ。さっきはまだ先だと言ってただろ」
「大丈夫です。ここからなら、歩いて帰れるので」
また、明からさまな拒絶反応をして、
信号で止まったところで、彼女は車を降りると、
「社長、今日は送っていただいてありがとうございました」
と、頭を下げ、そのまま駆け出して行ってしまった。
「……なんだよ、本当にシンデレラみたいじゃないか…」
呟くと、下にハイヒールの折れた踵だけが落ちていて、思わず拾い上げた。
「……ガラスの靴じゃなく、折れたヒールを落としていくシンデレラか…」
口にすると、なぜかため息がこぼれた……。