午前0時のシンデレラ

「……まだ、何かあるのでしょうか?」

と、彼女が振り返る。

「……これ、買ってきたから履くといい」

ハイヒールの入ったシューズボックスを差し出すと、

彼女はまた、「迷惑なんです……」と、さっきと同じセリフをくり返した。

「せっかく買ってきたんだから、履けって」

手渡そうとするのを、

「要りません……」

と、つき返される。

「どうして?」

「どうしても何も……私が、社長にヒールを贈られる理由がないですから……」

頑として折れない彼女に、

「俺が、贈りたいんだよ…ほら」

と、箱の蓋を開けて見せた。



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