午前0時のシンデレラ
「あっ…」と、彼女が横で小さく声を上げる。
「やめろっ……!」
あてがわれていた手をつかみ上げて、口づけられた唇を拳で拭った。
「……以前のあなたなら、これぐらいなんでもなかったじゃない」
言って、
「……キスなんて、挨拶代わりだったでしょ?」
そう続けた。
「……えっ」
と、彼女が息を呑む。
「そうよ。この人はね、そういう男なのよ……だから、あなたみたいな人よりも、私の方がずっと……」
言い終わらない内に、その頬を平手で打った。
「……悪いな。女を叩く趣味はないが、本当にいい加減にしろ……」
声を落として、告げた。