午前0時のシンデレラ
「……。……好きだからとかでは、ないんですよね……」
短い沈黙の後、ふいにそんな風にも訊かれて、
「えっ……?あ、ああ……」
ここで上手いことでも返せればと思うのに、口から出たのは、
「嫌いじゃない……」
という、ごく消極的な言葉だけだった。
自分でも腹が立つ程に、彼女の前では奥手になっている気がして、
たとえ嘘でも、「好きだ」と言えれば、関係の進展もあるかもしれないのに、
じっと向けられる彼女の眼差しを前にすると、ナンパな言葉を簡単に吐くことさえもできなかった……。