午前0時のシンデレラ

デスクに頬づえをついて、脚立に上がる彼女を見るともなしに見ていた。

照明を取り付け終わって、降りようとした足元がぐらりと揺れたのが目に入って、

「あっ…!」

声を上げて、急いで駆け寄った。

足を踏みはずして、脚立から落ちかける彼女の身体を、両腕で抱きとめた。

「キャッ…」

「大丈夫だったか…?」

腕の中の彼女に声をかける。

「あの…ありがとうございます……」

見つめ合い、互いに黙り込む。

抱えている彼女の体温が微かに伝わって、赤くなり目をそらして、

「いや…いい……」

と、横抱きにした身体をそっと床に下ろした。


< 77 / 171 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop