午前0時のシンデレラ
「……一度もない?」
「……はい、一度も……」
と、うつむく彼女に、
「だからか……」と、呟いた。
「…えっ? だからっていうのは……」
「……気持ちがどうも伝わらないから、どうしてかと思っていたんだ」
「……気持ち?」
と、彼女が不思議そうな顔で見つめる。
「あ…ああ……」
視線をはずして、ワインを飲んで、
さっき切り上げた分まで、今度こそ話さないとと感じる。
口に残るワインをグッと飲み込んで、意を決したはずが、肝心なところでまた自分の気持ちに自信が持てなくなって、
「……この料理、おいしいな…」
と、皿に目を落とした。