キミが教えてくれたこと◆番外編◆
自分の気持ちに気付いてからというもの、学校に行けば自然と彼女を目で追ってしまう
最近の彼女はとてもやわらかく、少し前まで孤立していたとは思えないくらいクラスメイトとの仲が深まっていた
「こういうのはどう?」
「えー、地味じゃない?もっと可愛くて目立つ、かつ動きやすい服!」
「じゃあこれはー?」
女子はみんな体育祭の仮装の話しで持ちきりだ
「なぁなぁ、俺らは?」
陸が話題に入っていくのを見てチャンスだと思い、自分も輪の中に入っていく
「俺らの意見とか必要ないの?」
そう言って楓太も近付こうとすると、
「男子は大丈夫!向こう行って!」
「間に合ってまーす」
「………」
ーー美月達め…
楓太はジロリとひと睨みし、自分の席へと戻って行った
気持ちに気付いたからといって、元々恋愛に奥手な楓太は茉莉花を見ているだけだった
何が好きなのか、普段はどんなことをして過ごしているのか…そんな簡単な質問さえも口から心臓が出そうなくらい緊張し、ついには何も言えず口を閉ざしてしまう
そんな毎日を過ごしているとあっという間に体育祭本番だ
朝からすぐに仮装し、まだ若干ジメついている天気に体がだるさを覚える
自分の椅子を持ち、運動場に向かう階段を降りていると下の方で誰かの話し声が聞こえる
螺旋状になっている手摺りから身を乗り出し見てみるとそこには想い人の横顔が見えた
「あ、林さんこんなとこで何やって…」
太陽の光が届きにくい少し暗がりの階段を降り、茉莉花のいる踊り場まで向かうとそこには普段と雰囲気の全く違う彼女がいた
いつもは制服で隠れている脚が…
露わで…
「…えっと、どうかした?」
その言葉にハッと我に返り、顔に熱が集中する
「お、俺が持ってっとくから!」
半ば無理矢理、茉莉花の手にあった椅子を奪い取り自分の椅子と重ねて持ち上げそのまま運動場まで走っていった
「はぁっ、はぁっ…」
椅子を二つ持ち上げながら全速力をしたため、運動場手前で息切れをし膝に手をついて呼吸を整える
「あれはっ…やばいっ…」
どくどくと波打つ心臓を抑え足元に目線を下ろす
「楓太?何してんの?」
振り向くとそこには美月が自分の椅子を持ってこちらを訝しげに見ていた
「な、なんでもねぇよ!」
「なんでもないって…あんた顔真っ赤だけど…」
「なんでもないって!ほら、行くぞ!」
会話を無理矢理終わらせクラス席に向かう楓太を不思議そうに見た後、美月も同じ場所に向かった