そのプロポーズお断りします!
チヒロさんが

「ねえ。その音ってお腹の音?」とクスクス私の顔を見る。


「…」私が顔を真っ赤にすると、


「さっき『ロマーノ』で飯を食ったろ。」とタイガさんが不思議そうなかおで私を見るので、

「な、なんで『ロマーノ』にいたって知ってるんですか?
カラオケに行くのも知ってたし…
も、もしかして…私をつけていたんですか?」

「アホか。つけてねーし。
俺は『ロマーノ』で料理作ってるんだよ。」

「え?去年入ったシェフってタイガさん?」

「そうだよ。おまえはジェットフーズにいるんだな。」

「なるほどー。偶然の出会いにタイガが慌てちゃったんだ…」とチヒロさんが頷いていると、

「こいつ、営業の男にラブホに連れていかれそうになってるし…」

「そんな事はありません!」

「いや、そんな事あるだろ。俺が通りかからなかったら、絶対危なかったし。
だから、またそんな事にならないようにサッサと、俺のオンナにしときたかったんだろ!」

「…」

どういう理屈だ…


「サッサとって…付き合う前に襲っちゃダメでしょ。」と呆れた声でチヒロさんが言って、

「お腹空いてるんだよね。悠里ちゃん。
タイガ、なんか作ってあげたら」

「しょうがねえな。」とタイガさんが立ち上がる。

「い、いいえ、大丈夫です。
…今日のお料理に苦手なトマトがたくさん入っていて…」

「トマト食えないのか?!
…イタリアンの料理人の妻がトマトダメって…」とブツブツ言いながらキッチンに立っている。

「…妻じゃないです。…」

帰るタイミングを逃した私は、チヒロさんにまた椅子に座らされていた。
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