そのプロポーズお断りします!
「はい。どうぞ。」と目の前にリゾットが置かれた。

とてもいい匂い。ハーブの香りだろうか。

「美味しそう。いただきます。」と手をあわせると、

「あっ、すごく美味しそう。私も食べる。」とチヒロさんは言って長い髪をタオルで拭きながら私の前に座った。


すっぴんでも、綺麗な人だ。オトナのオンナのひとってかんじ。タイガさんと並ぶととてもお似合いなのに…

恋人じゃないのかな?
タイガさんが私を押し倒していても、気にもしていないみたいだ。


「チヒロは夕飯食っただろ。」と呆れた声で言いながら、タイガさんはお皿にリゾットをよそってチヒロさんの前にも置いている。

ふたりで、フーフーと冷ましながらリゾットをたべる。

「とても美味しい。」と私が言うと、

タイガさんは嬉しそうに口の端をあげて、私の隣に座る。

「なあ、悠里。おまえ、引越した後、どうした?」

「?」

「大学行ったのか?金はどうした?ピアノは?よく弾いてただろう?」

「ああ、もう、音楽大学に入学決まってたから、父が私に残してくれた貯金と…足りないぶんは奨学金を借りた。
ピアノは処分して、住んでた家を貸したから、生活にはこまらなかったよ。バイトもしたし…」

「ピアノやめたのか?」

「音楽の教員の免許は取ったけど、就職は難しかったから、普通の事務員で就活した。」


「そうか…。あの頃の俺は料理人として働いてたけど、
気に入らないと喧嘩して、すぐに仕事を変わったりしててさ
…いいかげんで、金も無くて…なんの力にもなれなかった。
すごく後悔したんだ。
自分が大切だって思った女も守れなくて…
だからさ、俺はあれからちゃんとしようって…
次に会う時には、必ず、そばにいて、力になろうって思ってた。」と私の顔をジッと見つめた。
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