そのプロポーズお断りします!
2階にある部屋に入って照明とエアコンのスイッチを入れる。
殺風景な6畳位の空間が私の今の住まいだ。
ベッドと小さなテーブル。
作り付けのクローゼット。組み立て式の棚。
小さなテレビに冷蔵庫。
お風呂は1階。
キッチンは各階共同のものがある。

窓によって薄いブルーのカーテンを閉め、
スーツを脱ぎ捨て下着だけでベッドに転がり
今日あったことを考える。

タイガさん、
誰でも良かったわけじゃないよ。
…初恋の相手だったし

でも、
私は昔の悠里じゃないよ。

昔はきっとお嬢さんだったかな。
ひとりっ子で、小学校から私立だったし…
この部屋より広い子供部屋。
バレエにピアノ。週末に家族揃って外食。
仕立ての良いワンピースにリボン。
夏休みには海外旅行。

昔の事だ。

タイガさん、あの日、

「悠理が好きだ。」って言ってくれたよね。

両親に守られて、
ふんわりのんびりニコニコ暮らしていた
あの頃の悠里はもういない。

…がっかりさせて

『ごめんね。』

そう、唇だけ動かして目を閉じた。





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