そのプロポーズお断りします!
昼休みにスマホを出すと、

《悠里。ちゃんと飯を食いに来いよ。
今日来なかったら、仕事抜けて迎えに行くようにする。》

とタイガさんから昨日交換したアドレスにメッセージが入っていた。

脅迫ですか?

やれやれ。本気だよね。

《19時には仕事が終わると思います。
部屋の場所は覚えています。ひとりで行けます。
ちゃんと、仕事してください。》

と送ると、すぐに折り返し、メッセージが届く。

《トマト以外に苦手なものはないか?》

《強い匂いの葉っぱ。納豆。》

《了解。納豆は体に良いから食べられるようになるといいぞ》

…そんな事は知ってますよう。

と返事を返さずに

メッセージのアプリを閉じた。


「どうかした?眉間にしわが寄ってる。」
と坂井先輩が食事スペースに解放されているラウンジのテーブルの前の席で私の顔を見た。

営業2課は営業事務の女性が5名。2、3人ずつ交代で食事をするようになっている。
今日は坂井先輩と私が一緒に昼休みに入った。
先輩はコンビニのお弁当。
私はほとんど自作のおにぎりとカップスープ。(今日はコンビニのおにぎりだけど)

「な、なんでもありません。」と目を逸らすと、

「何?男?」と嬉しそうに私の顔をさらに覗く。

「…違います。何で先輩がうれしそうなんですか?」

「だって、今まで浮いた話がひとつもなかったから…どんな男か気になるじゃん。」

「そんなんじゃありません。」

「メールの相手がオトコだって認めるんだ。」と驚いた顔をして私を見る。

「…昔の知り合いです。」

「えー、元彼だ。でも、彼氏っていた事なかったって言ってたじゃん。」

「いませんよ。」とコンビニの袋を片付けると、

「ねえ、どんな男?」

…どんなって…

かなりイカツイ、我儘な大男。
肩も腕も筋肉が盛り上がっている。
やっぱりゴリラ…かな
顔は整っているかな。イケメンと昔も言われていたみたいだし…
笑顔は人懐っこいけど、不機嫌な顔は近寄りがたい。

ホワイトカラーのサラリーマンとは違って
夜道で出会ったら、きっと逃げたくなるような…


『ロマーノ』は坂井先輩の担当の店舗だ。

知られたくない。

「…内緒です。」とニッコリしておくと

「今度絶対聞き出してやる。」と坂井先輩も不敵に笑って一緒にオフィスに戻った。





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