そのプロポーズお断りします!
仕事を終えてパソコンの電源を落とし、

「お先に失礼します」と隣の席で帰り支度をしている坂井先輩に声をかけて立ち上がると、

「明日、元カレじゃない昔の男の報告待ってるから」とハートマーク付きの声をかけられ、

「そういうんじゃありませんってば!」と振り返って不機嫌な顔を作って急ぎ足で歩き出す。


違うってば!

強引なタイガの誘いを断れなかっただけだし…

断じて元カレなんかではない。

それでも
タイガの思い通りになってしまった自分が何となく歯がゆい。

睨むように真っ直ぐ見つめてくるタイガの提案をきっぱり拒むことが出来なかった。

私を真剣に心配しているのが解ってしまったから…

5年前のあの日、
小さい頃から知っている妹みたいな私とそんなことになってしまって…

私にとって初めてのオトコだと分かったタイガは責任を感じているのかも知れない。

突然のプロポーズもその一環なんだろう。

たぶん…

そうでなければ理解できない申し出だと思うし


不良グループのリーダーってものは
案外責任感が強くて面倒見が良い人がなるものなのだと
そう自分を納得させた。



タイガの心配を解いて
お互い別々に歩きだせばいい。


理解出来ないタイガの行動を
昨日から何度も考えて、そう結論づけておいた。


私はひとつため息をついてタイガの住むマンションを目指して足早に歩いた。











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