そのプロポーズお断りします!
「…お邪魔します」

渡された合鍵を使って誰もいないマンションの部屋にそうっと入る。


玄関の横の明かりを点けて部屋に入ると、

かなり散らかったリビングが現れた。

昨日は緊張してて気づかなかったけど…

雑誌や雑貨…これは何に使うもの?っていう健康器具や美容グッズとブランド物と思われる雑貨の箱が積み重なっている。

…あまり見ない方がいいだろうか

私はリビングのソファーの横にバッグと上着を置き、洗面所を借りて手を洗う。

ダイニングテーブルの上にはショッキングピンクのブロック型のメモ帳があった。

『鍋の中の野菜スープ。
冷蔵庫の中の鮭の蒸し物。
常備菜キノコのマリネ。白和え。ごぼうと牛肉の煮物は好きなだけ。
炊飯器に飯。
以上。

休憩時間に送っていくからテレビでも見て待つように。』

とサインペンで綺麗な文字が書かれていた。

ふむ。

そしてスマホにメッセージの着信音。

《家に着いたか?》

案外マメ。

《お邪魔しています。レンジを借りて温めていただきます。》

と返信すると、すぐに既読。

《腹一杯食え。帰りは送る。待ってろよ》

そしてすぐに返信が戻ってくる。

やれやれ。


《わかっています。ちゃんと仕事してください》

《はいはい》


『はい』は1回!と心の中でタイガに言ってお鍋の中のスープの美味しそうな匂いを嗅いだ。



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