七月八日のながれぼし
気持ち程度に点在している出店で、軽く食事を済ます。
焼きそばのパックを輪ゴムで止めて、ごみ箱に捨てた。
あたしより先に食べ終わっていたミツは、さっきあたしたちが短冊を吊るした笹の葉を黙って見ている。
さらさら、と葉がこすれあう音が、人のざわめきの中でかすかに聞こえる。
たくさんの色と飾りであふれた笹は、昔から変わらない。
あたしと彼の思い出の中にはいつだってこの風景が広がっていた。
あの頃のあたしは、自分の周りにあるものが当然だと、変わらないと、信じていた。
それはこんなにも七夕の空に浮かぶ星のように眩しく、儚いものだったというのに。
「……帰ろうか」
「うん」
ミツの言葉にこくりと頷き、そのまま笹の葉から目をそらす。
くるりと背を向けて、どこか急かされるように足を動かした。
あたしと違ってジーンズにポロシャツ、スニーカーと、下駄を履いていない彼の足音は聞こえないけど、確かに後ろをついてきていることはわかる。
天の川の先に向かうように、次第に歩くはやさを緩める。
神社の周りに人が集まっているから、しばらく帰り道を進めば喧騒を逃れる。
互いに黙りこんで、風の音だけが聞こえていたその場にミツの言葉が落とされた。
「ナツがこっちにいるのは、明日まで?」
「うん。遅くても夜には出るかなぁ」
「じゃあ今言わせて」
もう試験休みも終わるし、と続けようとするも、言葉を遮られて前を向いたままのんきに首を傾げた。
いったいなんの話なんだろう。
「僕、ナツが好きだよ」