七月八日のながれぼし
誰も悪くない。本当に些細なこと、小さな不幸が重なっただけ。
でもそのせいで、あたしは大切な人を、大切な人がすべてをなくしてしまった。
1年に1度でも、ふたりの間にはたくさんの言葉がや関係が、いつかは星の数を超えるほどの思い出になったはずなのに。
秘密を共有する人がいなくなって、あたしひとりで思い出を抱えることになって。
あたしがあの時、どれほど絶望したか、君は知らない。
「君には星の向こうの想い人がいるじゃない。それでいいじゃない」
失った記憶の中にいた気がする女の子が好き、それだったらなにも困ることなんてなかったのに。
優しい顔で笑わないで。
甘い言葉を口にしないで。
ねぇ、あたしの知らない彼に会いたくないよ。
「年に1度しか会わないあたしを好きだなんてありえない」
「ナツ……」
そっとミツがあたしの名前を呼ぶも、応えられるわけがない。
きゅっと唇を噛み締めた。
あたしもミツと同じ。
たくさんの人に出会う中、滅多に会えないあいつのことが好きだったくせに、彼に言えるような立場じゃない。
誤魔化して、うそを吐いて、どうしようもない。
だけど、……仕方がないじゃない。
あの日、あたしのミツルは死んだの。
運命は星だ。
まばたきよりずっと早く、落ちた。
ゆっくりと、道のりを戻る。
ミツに少しずつ近づいて、手を伸ばす。
繊細な輪郭に触れることをためらったあたしは、目の前の鎖骨と鎖骨の間に指先を下ろした。
「君はあたしの幼馴染。……それだけがよかったのに」
指に力をこめ、トン、と距離を取る。
話すことはもうなにもないと、その場から駆け出した。
あたしたちの関係の歪みも、望みの無謀さも、本当はわかっていた。
笹の葉にかけた願いは、もう叶わない。
それでもあたし、ミツルに会いたかった。