七月八日のながれぼし
七月八日のながれぼし
幼い頃のミツルと言えば、意地悪で子どもっぽくて我儘で、誰とでもけんかばかりしているこいつは、あたしに対しても態度は変わらない。
だから会えばいつだってけんかしてばっかり。
でもどうしてか離れたいとは思わない。
年に1度、おじいちゃんの家に遊びに来た時にだけ顔を突き合わすあたしの幼馴染。
そんな彼は、本当に褒められた性格をしていなかった。
強いて言うなら悪ガキだろうか。
女の子を泣かせることもあり、正義感のある子には追いかけ回されることもしばしば。
おばちゃんに言われておじいちゃんの作るお饅頭を買いに来るミツルとは、取っ組み合いのけんかにまで発展したことがあり、男女という性別の違いをあんまり感じなかったように思う。
他にも彼との思い出はたくさんある。
たとえば、七夕の時期にだけやって来る、織口 夏姫というあたしの名前から連想するものは同じらしい。
織姫なんて似合わないと言う人が多い中、誰より笑ったのはもちろんミツル。
それでも、誰もがあたしを〝ナツ〟と呼ぶ中、彼は笑顔であたしをナツキと。
似合わないはずの姫を隠さず呼んでいた。
それがどうしてか、嬉しかったんだ。
叱られたときの唇を噛み締める仕草や、子どもっぽくてばかなところ、お饅頭を食べる時の幸せそうな表情。
たくさん知っていた。
……気がつけば、そのすべてが好きだった。