七月八日のながれぼし




「ナツキ」



呼ばれた名前に反応して、顔を声の主に向ける。



意地悪で子どもっぽくて我儘で、誰とでもけんかばかりしているこいつは、あたしに対しても態度は変わらない。

だから会えばいつだってけんかしてばっかり。

でもどうしてか離れたいとは思わない。



年に1度、おじいちゃんの家に遊びに来た時にだけ顔を突き合わすあたしの幼馴染。

そんなこいつの瞳に自分の姿を見つけた。



「もしも大人になったら、────」



そう言って、あたしたちはひとつの約束を交わした。

普段ならありえないような、ぬくもりを感じる誓いにあたしは思わず頰を緩めたものだ。

きっとそれは、空の上で毎年交わされる再会の約束に似た、優しい想いがこめられていた。



ああ、それなのに。

運命の七月八日。

前の晩の満天の星空が噓みたいに、あたしの作ったプールの水面を空に映したみたいに。



もしも大人になったら。

その言葉の続きは、星になって、流れ落ちた。






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