七月八日のながれぼし
七月六日の煙の行方
ぎしり、と床が軋む音がした。
日が落ちてから何時間も経っていても、どこか生ぬるい空気に反して、足の裏はどこか冷たい気がする。
あたしが普段生活している土地にはもうない、昔ながらの日本家屋。
勝手知ったるその空間で足を進め、縁側に座りこむ姿を見つけ、歩みを緩めた。
「久しぶり、ミツ」
「わっ」
隣に並んで腰を下ろしながら、手の中にあった小さなお饅頭を彼の膝に落とす。
転がり落ちそうになるのを慌てて押さえた彼は、落ち着いたところであたしに顔を向ける。
「それ、おじいちゃんから。明日の祭りに出すあまりだって」
「そっか、嬉しいな。毎年ありがとう」
「まぁ、あたしはいつも持って来てるだけなんだけどね」
それなのにおばちゃんも毎年嬉しそうに頰を綻ばしてくれるものだから、なんだか面映ゆい。
あたしはなんにもしてないのになぁ。
「ナツ、元気にしてた?」
「うん」
「そっか、よかった」
ミツは独特の空気をまとっていて、今この場にいるはずなのにちゃんと生きているのか不安になる瞬間がある。
だけど彼は確かに心臓を動かしていて、不思議と他人を引きつける雰囲気がある。
ふにゃりと子猫のような笑みは無垢で柔らかい。